ドローンに関する法規制

 先ごろから、ドローンを用いた山岳遭難者の捜索や海難救助に関するニュースを耳にするようになりました。
 ドローンビジネスを検討している企業はもちろん、いまでは一個人でも簡単にドローンを手に入れることができる時代であり、ドローン飛行に関する法規制について興味・関心がある方が増えていると思います。

 まず、屋外でドローンを飛ばすのに運転免許のような資格は必要ありません
 但し、以下で述べるとおり、ドローン飛行には様々な規制があり、一定の空域での飛行や特定の方法で飛行させるには許可や承認が必要になります。そのような許可や承認を申請する際、自分に一定の飛行技能や経験があることを証するため、技能資格を有していることを示すことで、許可や承認が得られやすくなる可能性はあります。

 そしてドローン飛行の規制についてですが、大きく「法律」と「条例」の2つによって規制されます。
 このうち「条例」は、各地方公共団体がそれぞれ地域の実情に応じて定めるもので、内容は地方公共団体によって異なります。
 本稿では「法律」による規制について簡単にご説明します。

 ドローン飛行を規制する主な法律として、以下のものがあります
 (1)航空法
 (2)国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(通称:小型無人機等飛行禁止法)

 航空法は、“航空機の航行や人の安全を確保する”ことが目的であり、その観点からドローン飛行に規制がかけられています。
 全てのドローンが規制対象となるのではなく、航空法の「無人航空機」に該当するものが規制対象となります。
 「無人航空機」とは、とても簡単に言えば、本体重量とバッテリー重量の合計が200g以上のドローンのことです。
 ちなみに昔からあるラジコン飛行機やラジコンヘリも200g以上であれば「無人航空機」です。

 航空法上、「無人航空機」は以下の空域を飛行することが制限されています。
   ・空港周辺
   ・人又は家屋の密集地(国勢調査の人口集中地区)の上空
   ・地表又は水面から150m以上の空域
 裏を返せば、空港周辺でなく人や家屋の密集地でないところで地表や水面から150m未満の範囲であれば、航空法上の制限はありません。
 もっとも、最後の人又は家屋の密集地というのが曲者で、いわゆる大都市は漏れなく飛行制限区域になります。自己所有地内での飛行であっても、その土地が密集地にあれば、ドローン飛行は制限されます。
 その土地が「人口集中地区」に含まれるかどうかは、国土地理院のサイトなどで確認することができます。

 また上記の範囲内であっても、航空法上、「無人航空機」の飛行には以下の制限が課されています。
  ・日中に飛行させる
  ・目視範囲内で常時監視して飛行させる
  ・人、建物、車両などと、直線距離で30m以上の距離を保って飛行させる
  ・祭礼縁日など多数の人が集まる催し場所の上空で飛行させない
  ・危険物を輸送しない
  ・物を投下しない
 すべて、航空機の航行や人の安全という観点から定められた規制です。

 これとは異なり、“国の中枢機能や重要施設、公共の安全を確保する”という観点から定められたのが、小型無人機等飛行禁止法です。上に記載した、法律の正式名称を読んでもらえればその趣旨は明らかかと思います。
 ちなみに航空法は国土交通省の管轄であり、小型無人機等飛行禁止法は警察庁の管轄です。
 この法整備のきっかけは2015年の首相官邸ドローン落下事件と言われています。

 小型無人機等飛行禁止法の規制対象は「小型無人機」で、簡単に言えばドローンのことです。航空法と違い、重量要件がありません。200g未満のドローンも対象です。

 そして小型無人機は、「対象施設周辺地域」上空での飛行が制限されます。「周辺」とはおおむね周囲300メートルです。
 主な対象施設は以下のとおりです。詳しくは、警察庁のサイトなどに掲載されています。
  ・国会議事堂
  ・首相官邸
  ・危機管理行政機関の庁舎
  ・最高裁判所
  ・皇居、御所
  ・政党事務所
  ・外国公館 
  ・原子力発電所

 以上、ドローン飛行を規制する主な法律についてみてきましたが、冒頭にも書いたとおり、実際に飛行させる場合は、飛行場所を管轄する地方公共団体が条例で規制している例が多く、条例の確認は必須です。
 たとえば当事務所が所在する大阪市は、大阪市公園条例の「他人に危害を及ぼすおそれのある行為」をドローン飛行に適用することで、市内全ての公園でのドローン飛行を規制するとの方針を示しています。

 また、上で述べたところは、あくまでも国や公共団体による規制に限った話であり、たとえば、他人の土地の上空をドローン飛行させた場合の土地の所有権侵害やプライバシー侵害といった、私人間の紛争はまた別の問題です。
 そしてこちらの私人間紛争の問題こそ、未だ利用者が多くないため現在は顕在化していませんが(ドローンに限らず自動運転やAIなどの遠隔操作型及び自律型ロボットを対象とするロボット法全般について言えることですが)、いずれ大きな問題になることが明らかな分野です。
 こちらはまた稿を改めて検討してみたいと思います。

                                                        弁護士 白井一成

2018/03/01| コラム