それ、本当に商標権侵害ですか?(2)

 自分の社名や商品名として用いていた名称が、自分の知らないところで誰かに商標登録され、権利者から商標権侵害を主張された場合、直ちにこれに従う必要があるかというと、必ずしも従わなくてよいケースが多々あります。

 以前のコラムでは、それが商標的使用なのかどうかを検討すべきである、という内容をとりあげましたが、今回は、同様のケースで検討すべき先使用権について取り上げます。

 先使用権(商標法32条)とは、簡単に言えば、当該商標が出願された頃から同商標を使用しており、そのことが需要者の間で相応に広まっていた場合は、仮に他人に商標登録されてしまっても、そのまま継続して使用し続けることができる、というものです。

 商標の出願時期より“先に使用していた者”を保護する規定ですが、単に先に使っていたという事実だけでは足りず、「需要者の間に広く認識されている」ことが必要であることがポイントです。
 この「広く認識されている」というのがどの程度で足りるのかは、その商品や役務の内容によって変わりますので一概に言えませんが、だれしもが知る存在である必要まではないため、たとえ中小企業の名称や商品名であっても、普通に社名や商品名として使用している場合、検討してみる価値は十分あります。
(もちろん、一番の対策は、名称の使用を開始した時点で、先ず自分で商標出願することですが。)


 近年、相手に商標権を買い取らせる目的で、相手が使用している名称を“後出し”的に商標登録し、相手に警告書を送り付けるという事案が多数確認されています。

 実際、当事務所でも多くのご相談を受けました。そして多くのご相談者様が、警告書に従って商標権を買い取ったり、名称を変更したりしなければならないと考えていました。
 他人によって正式に商標登録されており、かつ、登録された商標を自分が使っていることは明らかなわけですから、そう考えてしまうのも無理はないことではあります。

 しかし、私の感覚では、ご相談を受けた事案のほとんどが、前述の商標的使用に当たらないケースか先使用権が認められ得るケースであり(中には、ほかの弁護士に相談したところ商標権侵害にあたると判断されたと言っておられた方もいましたが)、実際にその旨を回答すると、権利者はそれ以上何も言ってこなくなる、ということが多かったです。

 このような警告書が来たとしても、すぐにあきらめずに、まずは知的財産権を理解している弁護士等にご相談されることを強くお勧めします。

                                                        弁護士 白井一成

2019/09/27| コラム